9月は夏の疲れが残りつつも、秋の気配を感じられる季節。1歳児にとっては、体調や生活リズムの変化が現れやすく、同時に歩行や言葉、友だちとの関わりなど発達のステップがぐんと進む時期です。
本記事では、保育士さんが個人記録を書く際に役立つ低月齢・高月齢別の具体的な例文を3パターンずつご紹介します。
さらに、9月ならではの保育のねらい、環境構成の工夫、記録に盛り込みたい観察ポイントも詳しく解説。
月齢ごとの発達段階を押さえた温かみのある記録は、保護者の安心感を高め、保育者同士の情報共有にも役立ちます。
9月の季節感を活かしながら、子どもたちの「今」を未来につなぐ記録作りを一緒に目指しましょう。
9月の1歳児個人記録の書き方ポイント
9月は夏の疲れが残りつつも、涼しい日が増えて外遊びがしやすくなる季節です。この時期の1歳児は、体調や生活リズムの変化、そして友だちとの関わりがぐんと広がる時期でもあります。個人記録には、こうした成長の兆しと季節特有の変化をバランスよく盛り込むことが重要です。
季節の特徴と子どもの発達傾向
9月は季節の変わり目による体調変化が目立つ時期です。日中は残暑が続く一方で朝晩は涼しくなり、体温調節が未熟な1歳児は体調を崩しやすくなります。また、運動能力や言葉の発達も加速し、できることが増えていくタイミングです。
| 項目 | 9月の特徴 |
|---|---|
| 気候 | 日中は暑さが残るが、朝夕は涼しくなる |
| 発達面 | 歩行や言葉の発達が顕著になり、自立心が芽生える |
| 体調管理 | 夏の疲れや気温差で体調を崩しやすい |
保護者と共有すべき観察ポイント
記録は保護者の安心につながる情報であることを意識しましょう。特に以下の点は具体的に書くと、日々の子どもの変化が伝わりやすくなります。
- 食欲や睡眠の変化
- 言葉や運動の新しい習得
- 友だちとの関わり方や遊びの様子
- トイレや着替えなど自立に関する行動
月齢別に意識したい視点
1歳児といっても、月齢によって成長の段階は大きく異なります。低月齢では歩行や言葉の発達が始まり、高月齢では自己主張や友だちとの関わりが増えます。記録では「その子らしさ」が伝わる具体的なエピソードを入れると効果的です。
月齢別:9月の1歳児の姿と記録例(例文3パターン付き)
ここでは、低月齢(1歳6ヶ月~1歳11ヶ月)、高月齢(2歳0ヶ月~2歳6ヶ月)、そして共通して見られる特徴について、それぞれ3つの例文パターンをご紹介します。実際の個人記録作成の参考にしながら、子ども一人ひとりの姿に合わせてアレンジしてください。
低月齢(1歳6ヶ月~1歳11ヶ月)の特徴と例文
低月齢の子どもたちは、歩行や言葉の発達が始まり、日々できることが増えていく時期です。まだまだ保育者の援助が必要ですが、自分でやりたいという自立の芽生えが見られます。
| 特徴 | 観察ポイント |
|---|---|
| 歩行が安定してきた | 段差や坂道のチャレンジ |
| 言葉が増える | 身近な物や人の名前を口にする |
| 食事の好き嫌い | 食べる量や拒否反応 |
- 例文①:「1歳7ヶ月の女児は、靴を自分ではこうと試みていますが左右を逆にしてしまうこともあります。それでも諦めず挑戦する姿に成長が感じられます。『バナナ』『ブーブー』など新しい言葉も増え、遊びの中でよく口にしています。」
- 例文②:「1歳8ヶ月の男児は、散歩中に小さな段差を見つけると『よいしょ』と言いながら慎重に登ります。給食では苦手なピーマンを保育者の声かけで一口だけ食べられるようになりました。」
- 例文③:「1歳10ヶ月の女児は、お友だちが遊んでいる積み木に興味を示し、隣で同じ形を並べていました。保育者が『同じだね』と声をかけると笑顔を見せ、言葉でのやりとりを楽しむ様子が見られます。」
高月齢(2歳0ヶ月~2歳6ヶ月)の特徴と例文
高月齢の子どもたちは、自己主張や友だちとの関わりが活発になります。トイレや着替えなど、自分でできることが増える反面、気持ちの折り合いがつかず感情が爆発する場面もあります。
| 特徴 | 観察ポイント |
|---|---|
| 自己主張が強まる | おもちゃの取り合い、言葉でのやりとり |
| トイレへの興味 | 便座に座る、排尿後に知らせる |
| 運動能力の発達 | 遊具の使い方や走るスピード |
- 例文①:「2歳1ヶ月の男児は、園庭でお気に入りの車のおもちゃを取られると『だめ!』と言って強く主張します。その後、保育者の仲立ちで『どうぞ』と言える場面もありました。」
- 例文②:「2歳3ヶ月の女児は、おむつ替えの際に自ら便座に座り、排尿が成功すると嬉しそうに『でた!』と報告していました。」
- 例文③:「2歳5ヶ月の男児は、遊具のはしごを一人で登り切り、上から手を振っていました。新しい動きに挑戦する意欲が高まっています。」
共通して見られる行動と発達の例文
低月齢・高月齢を問わず、季節や環境の影響を受けて見られる共通の姿があります。特に9月は自然との触れ合いや音楽活動への興味が強まる傾向があります。
| 共通の特徴 | 観察ポイント |
|---|---|
| 自然への興味 | 落ち葉やどんぐりを拾う様子 |
| 音楽活動 | リズムに合わせた体の動き |
| 季節の体調変化 | 睡眠や食欲の変動 |
- 例文①:「体操の曲が流れると、年齢を問わず子どもたちは嬉しそうに体を揺らし、両手を大きく広げて踊っていました。」
- 例文②:「散歩中、どんぐりを見つけた子が『まるい!』と声をあげ、お友だちと見せ合いながらポケットにしまっていました。」
- 例文③:「夏の疲れが出て午睡時間が長くなる子もいましたが、しっかり休むことで午後から元気に遊ぶ姿が見られました。」
9月に盛り込みたい保育のねらい
9月は季節の変わり目で体調の変化が起きやすく、また運動や遊びの幅が広がる時期です。個人記録では、この時期ならではの生活面・健康面、運動・遊び、社会性や言葉の発達といった3つの視点を意識して書くことがポイントです。
生活・健康面のねらい
残暑の影響や日中と朝晩の気温差により、体調を崩す子が増える傾向があります。保育では無理のない生活リズムを整え、十分な休息と水分補給を心がけることが重要です。
| ねらい | 具体的な保育内容 |
|---|---|
| 生活リズムを安定させる | 午睡時間や食事時間を一定に保つ |
| 体調変化への早期対応 | 朝の健康観察で機嫌や食欲をチェック |
| 水分補給の徹底 | 遊びの合間にこまめに水や麦茶を提供 |
運動と遊びのねらい
涼しい時間帯を活用して戸外活動を増やし、運動会や季節の遊びにつなげます。この時期の子どもは、挑戦心が芽生えやすく、新しい動きに取り組む意欲が高まります。
| ねらい | 具体的な保育内容 |
|---|---|
| 全身を使った遊びを楽しむ | マット運動、かけっこ、遊具あそび |
| 季節を感じる活動 | 落ち葉や木の実を使った遊びや製作 |
| 挑戦する気持ちを育てる | 登る・渡る・飛び降りるなどの運動遊び |
社会性や言葉の発達のねらい
友だちや保育者との関わりが深まり、言葉でのやりとりが増える時期です。会話ややりとりを通して相手の気持ちを理解する力や自分の思いを表現する力を育てます。
| ねらい | 具体的な保育内容 |
|---|---|
| 言葉でのやりとりを増やす | 絵本の読み聞かせ、手遊び歌、模倣遊び |
| 友だちとの関係を築く | 協力して遊ぶ活動を取り入れる |
| 感情表現を育む | 「うれしい」「かなしい」などの気持ちの言葉を伝える |
環境構成と保育者の工夫
9月の保育環境づくりでは、季節の変化や子どもの成長段階に応じた安全性・自立支援・情緒の安定が重要なポイントとなります。ここでは、自立を促す工夫、トラブル時の対応、そして季節に応じた安全管理の3つの視点からまとめます。
自立を促すための環境づくり
「自分でやってみたい」という気持ちを支えるために、道具や環境を子どもの手の届く位置に整えます。これは単なる便利さだけでなく、成功体験を積むきっかけになります。
| 環境構成の工夫 | 具体例 |
|---|---|
| 靴や衣服の収納 | 自分のロッカーを分かりやすくラベル表示 |
| 手洗い場 | 踏み台を設置し、自分で蛇口に手が届くようにする |
| 食事 | 小さなスプーンやフォークを用意し、自分で持ちやすくする |
トラブル時の対応と心のケア
友だち同士のトラブルは、成長過程で避けられない大切な学びの場です。保育者は感情の代弁者となり、子どもの気持ちを受け止めながら解決に導きます。
- 「貸して」「いいよ」といった言葉のやりとりを促す
- 双方の気持ちを言葉にして伝える
- 落ち着くまで無理に解決させず、少し距離を取る
季節変化に合わせた安全管理
9月は残暑と朝晩の涼しさが交互に訪れ、体調を崩しやすい時期です。活動や環境をこまめに調整して、子どもが快適に過ごせるよう配慮します。
| 安全管理のポイント | 具体例 |
|---|---|
| 熱中症対策 | 戸外活動は午前中の涼しい時間に実施し、日陰で休憩 |
| 衣服調整 | こまめに着脱を促し、体温の上がりすぎや冷えを防ぐ |
| 戸外活動の安全 | 遊具の点検と人数制限で安全に配慮 |
個人記録を書くときのチェックリスト
9月の1歳児個人記録は、ただ出来事を並べるだけでなく、子どもの成長や個性がしっかり伝わる内容にすることが大切です。ここでは、保育士同士や保護者との情報共有をスムーズにし、読み手が安心できる質の高い個人記録を書くためのチェック項目をまとめました。
月齢別の発達を明確にする
「1歳児」という大きな枠ではなく、1歳6ヶ月と1歳11ヶ月ではできることや行動に差があります。記録ではその子の今の段階を具体的に書きましょう。
- 歩行や言葉の発達度合いを明記
- 新しくできるようになった動作や遊びを記録
- できることと苦手なことをバランスよく記載
子ども一人ひとりの個性を反映する
同じ月齢でも、性格や興味の対象はさまざまです。個人記録は「誰のことかすぐ分かる」ようなエピソードを入れることで温かみが増します。
| 視点 | 記録の工夫 |
|---|---|
| 好きな遊び | ブロックを積む時の集中した表情など、具体的に描写 |
| 性格の傾向 | 慎重派、挑戦好きなどをエピソードで表現 |
| 日常の様子 | 給食時のやりとりや散歩中の発見を記録 |
保育者の関わり方や工夫を盛り込む
記録には子どもの行動だけでなく、それに対して保育者がどんな関わりをしたのかも入れると、読み手が保育の意図を理解しやすくなります。
- 挑戦を見守ったのか、援助を加えたのかを記録
- 友だちとの関わりでの仲立ちの方法を明記
- 体調面での対応(衣服調整や休息確保など)を具体的に書く
まとめ:温かみのある9月の1歳児個人記録へ
9月は、1歳児が自立心や社会性を育みながら、季節の変化を全身で感じる大切な時期です。その一方で、夏の疲れや気温差による体調変化にも注意が必要です。個人記録では、成長の瞬間と健康面の両方をしっかり捉え、保護者や同僚保育士と共有しましょう。
具体的には、次のポイントを押さえると記録の質がぐっと高まります。
- 月齢ごとの発達や行動を明確に記す
- 子ども一人ひとりの個性や日々の小さな変化を描写
- 保育者の関わり方や配慮した点を具体的に記録
- 安全管理と健康面の情報も忘れずに盛り込む
これらを意識することで、単なる出来事の羅列ではなく、その子らしさと保育の意図が伝わる「生きた記録」になります。温かみのある文章は、保護者の安心感を高めるだけでなく、次の保育計画にも役立ちます。9月という季節感を活かし、子どもたちの今の姿を未来に残せる記録を目指しましょう。

